28日目 いろんな巡礼 いろんな巡礼者
消灯時間が過ぎてから部屋に戻ってきた可愛いニコラはヘッドライトの灯りを頼りになにやら絵を描いてるふうでした(すでにベッドでうとうとしていたわたし)
たまにため息をつきつつ描き続けるニコラ、わたしは久しぶりに鉛筆を滑らす音を聞いていました
使いこなれてる彼のバックパックは彼と一体どこに行って来たのだろう
たくさんの絵を描いてきたのだろうか…
わたしが寝返りを打つ度に隣のベッドの住人がビクッとしてる気配、少しでも彼の寝息が聞こえてくるとまたビクッとしてる気配を感じ続け、ようやく朝5時
わたしの起床時間となりました
あのね、可愛いニコラ、寝なさい
気になるでしょ!
たぶんニコラたんはあんまり寝てないと思う(笑)
それでよくカミーノ歩けてるよね
わたしが顔を洗いにそっとドアノブに手をかけると
「ふにゃ…さりあ?おきたの?」
と小さな子どものように聞きます
「うん。でもまだ5時だから寝てな」(イタリアの方は朝はわりとゆっくりの方が多いです)
というと
「うん…ありがと…あっ…ぐっもーにん…」
と…はぁ…この子可愛い…
そして敢えてゆっくり顔を洗い、トイレを済ませ、C3fitちゃんを装着して、キッチンに行ってご自由にどうぞのハムをつまんで部屋に戻ると…
大変くつろいだ体勢で健やかに寝息を立てるニコラたん(笑)
ねぇ、そんなにわたしとふたりだと寝れないの?うるさかったの?ごめんね(笑)
起こさないように静かに荷物を廊下に移動させて、日本から持って来ている浮世絵が描かれた折り紙で鶴を折りました
そしてニコラのバックパックの上にそっと置いてきました(ニコラたんは大変無防備で、バックパックの中の男の子な本も丸見えだし、お財布はバックパックの上に乗せたまま寝ていました)
部屋を出る際、むにゃむにゃ言ってるニコラに小さな声でブエン カミーノと言うと、寝ぼけながらもとびきりの笑顔でブエン カミーノと言ってくれました
ニコラとの別れを大変嘆きながら歩き始めたら、アルベルゲの5段ほどの外階段から落ちました…ケガとかはないです
全ては可愛すぎるニコラを創り出した神が悪い!
そんな感じで歩き始め、1時間歩いた次の街でバルに寄って朝ごはんを食べました
食パン大のデニッシュ生地のクロワッサンを上下半分にして、日本の2倍の大きさのハムを2枚と、チーズを1枚挟んで、上からアプリコットジャムを薄く塗ったハムサンドを食べました
美味しかったぁ…デニッシュ生地のクロワッサンだよ!そこにアプリコットジャムだよ!このオシャレな味!
こっちのサンドイッチは基本的に調味料使ってないので、素材の味が本当に引き立つんです
帰ったらレレちゃんに作ってあげよう( ♡ ´罒` ♡ )
今日の街、ラバナル デル カミーノに着いてブラブラしてると向こうから
「さりあぁー!♥️」
と爽やかイケメン風のシルエットが走ってきます
可愛い可愛いニコラです!バックパック背負って走るってすっごく大変なのに!もう!可愛い子!!
丸いオシャレサングラスに白いオシャレハットに白いTシャツとハーフチノパン
汗だくで、少しタバコの匂いのするパッと見イケメンの、可愛いニコラです!
「あのね!朝起きたらさりあがいなくて、すっごく悲しかったの…でもね、僕のバックパックの上に素晴らしい贈り物があってね!感動したの!これはきっとさりあだって!!
さりあありがとう!大好きだよ!会えてよかった!さりあぁ!」
と激しくハグされました
やっぱり寝ぼけてたのね(笑)
きっとこの人は黙って立っていればどこぞのハイブランドのモデルさんにもなれるんだろうけど、口を開くと本当に可愛いの( ♡ ´罒` ♡ )
ついついなんかしてあげたくなるっていうか…これがイタリア人の持つ魔性なんだろうね
可愛いニコラは次の街まで行くと言うのできっとこれでお別れです
なんだったら着いて行きたいところですが、すでに14時でものすごく暑いのに更にこれから標高300mも高くなる峠の上まで行くなんて…わたしには正気の沙汰とは思えないので残念ながら見送りました
「さりあと出逢えてとっても幸せだよ!君は僕の宝物だよ!」
とイタリア仕込みの素晴らしい御言葉を賜りましてわたくしも身に余る幸福に眩暈がしそうな午後のひとときでした
育ちがいいんだろうなぁ…うちのレレちゃんもそんな風に見えるのかしら…
巡礼者はいろんな人がいるんです
それこそ世界中から毎日たくさんのたくさんの人がこのカミーノにやってきます
30〜60Lのバックパックを背負ってトレッキングシューズで歩くのが一般的なスタイルです
半数くらいの人がトレッキングポールを使用しています
しかし人によってはバックパックを背負っていない人もいます
小さなサブバックパックのみで歩くその人達は郵便局や専門のポーターさんに1日5〜15€で次のアルベルゲまで重いメインバッグを運んでもらっています
マフィアママンも毎日郵便局に依頼してました(アルベルゲで手続きできます)
そして靴はわたしはトレッキングシューズで歩き、アルベルゲとスーパーまで行く分にはビーチサンダルを使用しますが、ここも人によって様々です
タウン用のナイキやアディダスのスニーカーや、ジョギングシューズで歩く人、ツッカケタイプではなくマジックテープで着脱するタイプのサンダルで歩く人もいます
トレッキングシューズ、タウンスニーカー、サンダルを使い分けてる人も結構います
服装は比較的みんなスポーティですが、1度「女子会に行きます♪」的なブラウスとスカートにゆるふわヘアで歩くぽっちゃりさん2人組を見かけました
スカートで歩く女性はたまにいます
その多くがご主人と一緒だったり、彼氏と一緒に歩いてます
その方達はゆるふわヘアにばっちりナチュラルメイクで、大きなバックパックを背負っていました
お化粧して歩く女性は7割を越えます
レストディ以外すっぴんで過ごすわたしはむしろレアな存在です
わたしが毎日愛用している愛しのC3fitちゃんのようなコンプレッションタイツを使用してる人はほぼいません
わたしが今まで見たのは台湾人男性とソフィアくらいです(ソフィアのはコンプレッションタイツとは言えないような気もするけど)
1度シスターが歩いているのを見ました
なぜわかったかと言うと、あのシスターの格好のまま歩いていたから!
この暑い中フリースの帽子を被り汗だくで歩く不思議なおじさんもいました
年齢も様々です
最年少は0歳です
お母さんに抱かれてのカミーノです(5人兄弟の末っ子で、両親と5人の子ども達とワゴン車でのカミーノです)
アンドレのように高齢でもカミーノを歩いてる人はたくさんいます
年齢も格好も母語もナショナリティもセクシャリティも信じるものも違うたくさんの人が同じ教会を目指して歩きます
カミーノを話される言語の多さからバベルの塔と表現することもあるそうです
重いバックパックを背負わない巡礼者を快く思わない人もいます
バスを使う巡礼者を笑う人もいます
SNSを使う巡礼者を納得しない人もいます
私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
飛べる小鳥は私のように、
地面を速く走れない。
私が体をゆすっても、
きれいな音はでないけど、
あの鳴る鈴は私のように、
たくさんな唄は知らないよ。
鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。[金子みすゞ]
そうみんな違ってみんないい
わたしはバックパックを背負いたいから背負い、自分の足で大地を踏みしめたいから歩き、日本の家族や友人にわたしの見聞きしたものや無事を伝えたいからブログを書きます
全てわたしが選び、わたしが好きでやってること
ここは基本的に他の巡礼者やオスピタレロや地元民に迷惑をかけなければ自由なところです
納得出来ない理由もわかる
でも快適に自分に見合った巡礼をするのも当然の権利だとわたしは思う
これは「巡礼」とは言えないのかもしれない
むしろ「巡拝」と表現したほうが適切ではある気もする
でもきっとヤコブさんは「どっちでもいいよ♪( ´▽`)」と言ってくれる気がする
ここまで歩いてくるとスタート地点にもバラエティが飛んだ答えが返ってきます
サンジャンピエドポーはむしろ半数になり、ログローニョやレオンという答えが多くなります
スタート地点も自分の予定や体力に合わせて選ぶことのできるこの素晴らしい旅をひとつの選択肢として捉えることに意味があるんだと思うようになった、29歳の夏です